探偵の愚痴
HOME
最初の探偵事務所
矛盾
訳のわからない
学校
学んだこと
運営ならず
閉鎖の日
新しい就職先
 最初の探偵事務所

思い返せば、あの探偵事務所に採用が決まってから、ぼくの夢や計画が狂いつつあったのかもしれない。
最初はなにがなんだかわからないまま、ただ言われたことを、そんなものか、と聞くくらいしかできなかったのだけれど、このとき、早くに気が付いていれば、無駄な時間を過ごすこともなかったのかな?
でも、この経験がなかったら、あいつの存在を知ることもなかったから、やはり、運命だったのか・・・。

ぼくは、念願の名古屋に出られたことに、かなり浮かれていた。
しかも、探偵事務所への採用。
最初は、生活も苦しいだろうから、駅から少し離れ、名古屋市内ではあるが、中心地から少々離れた場所にアパートを借りた。
もちろん、車なんて持って来られない。
駐車場代がかなり高いから。

就職先では、車もあるとのことだった。
けれど、就職してみると、車を持っていないぼくは、かなり肩身の狭い思いをした。

しかも!!!
その事務所はなぜか、ほとんどが女性。
ぼくが想像していた探偵事務所とは、かなりかけ離れた印象。
事務所も、観葉植物が置いてあったりして、かなり綺麗チックなものだった。
その理由は、ほどなくしてわかった。

実は、この事務所、3ヶ月前まで結婚相談所だったのだという。
それも、1年ほど経営しただけ。
何組か、結婚まで成立し、成功報酬も入ってきたので、当分の事務所運営費用はあるようなのだが、収入がなければ3人いる女性の事務員さんのお給料を払えなくなる。

結婚相談所を閉めるとき、事務員を解雇すれば良いものを、人のよいこの社長は、それをすることができなかったらしい。

おまけに、この事務所、家賃を安くしてもらうために、3年分の家賃を払いこんでいるというから、残りの2年、何らかのことで運営して行きたいというのだ。
イコール、家賃の支払いがない分、事務所の運営としては、ちょっと楽なものなのだけれど。

そして、ほかにもエステサロンも持っていたが、経営が成り立たず、資金を貸してくれていた人に明け渡し、その娘にエステの器具ごと持っていかれたのだとか。
それも、ちゃんとしたところに法律的に相談していれば、何らかの形で残せるものもあっただろうに、自分がお金を借りたのだから、と、美味しいところはすべて持っていかれたようだ。

ぼくは、こんな人について行くことができるのだろうか?
就職後、すぐに感じた不安は、2年後に現実となるのだが、それも2年後の話し。
ついでにいうと、最後の3ヶ月お給料が未払いのまま。
どうしてもっと早く、辞めると言う決断をしなかったのか、そこは今でも悔やまれるところだ。

念願の名古屋で探偵の夢。

両親にも担任にも、友達にも、絶対になってやる、と大見栄きって地元を出てきたぼくには、やっぱり無理でした、と地元に帰ることだけはしたくなかったので、しがみついていたのかもしれない。




 
Copyright(C) 探偵の愚痴