探偵の愚痴
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 訳のわからない調査条件

そんな調査した結果から、社長が出した条件が、なるべく高い費用で調査を受けるよう、受ける調査は浮気調査のみ、男性からの依頼は受けない、というもの。

これ、誰が納得する条件なんだ。
ぼくはすぐに反対したのだけれど、社長の固い決心は変わらない。
あの、他の事務所の調査しているときの、妙な期待感や、高揚した気分が嘘のように吹き飛んでしまった。

結局、チラシやホームページは、ぼくと女子社員が提案したもので、おおまかつくることが出来た。
しかし、電話応対にでる事務員と、実際に面談に行くぼくには、社長の決めたルールに従って調査を受けるように、とのこと。
そして、入社して半年後、ようやくチラシとホームページが出来上がり、事務所のスタートとなった。

そこからの仕事は、さらにぼくの気分を暗くした。
このときから主な仕事は、ほとんどがポスティング。

やる気のない女子社員を連れて、どちらかと言えば高級住宅外のポストにチラシを入れて回る。
社長曰く、ターゲットはお金持ちの奥様なんだとか。

最初、ぼくもしらなかったのだが、若かりし頃、社長自ら探偵として働いていたことがあったらしい。
いわゆる、バブリィな時代に。
そのころは、“とにかく今すぐ調査に入ってほしい”、と札束を持ってくる上客までいたらしいのだ。

それって、何十年も前の話しだよな・・・、と思いつつ、うらやましい気分で話しを聞いていた。
でも、そのころと同じような客は、間違いなく今の時代いないし、お金を持っている人も、出ししぶりをすることは嫌でもわかるはずなのに。
案の定、そこから半年の間、調査は1件も入らなかった。

よく考えると、ぼくはまだ、探偵のノウハウを何ひとつ教えてもらっていない。
仕事の合間に鍛えてやる、と言っていた社長は、今度はペットのためのショップを準備するのに忙しく、仕事が入らなければ、ノウハウも教えられない、と、ポスティングばかりを要求。
自分の足でチラシを配ることは、探偵の基礎としての体力を鍛え、仕事の達成感にもつながるのだ、とか。

その半年の間、問い合わせの電話も入ったのだが、それは浮気調査意外のもので、男性からの問い合わせもあったが、社長の意向とは違うと言うことで、実際の仕事には結びつかなかったのだ。

当たり前だよな。




 
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