今日もあいつはえらそうだった!!!
上から目線とか、そんな程度のものじゃない。
どちらかといえば、ぶつけようのないイライラをぼくにぶつけてくる、的な?
そんなあいつの元なんて、すぐに離れてしまえばいいのに。
人のイライラは、自分にも感染してくるからやっかいだ。
それでも、あいつのもとを離れようとしない自分もいるのだ。
なんでかって?
腕だけは、たぶん本物。
洞察力とか判断力とか、運転技術とか、様々な面でそれを感じた。
ド素人だったぼくでさえ、それがわかってしまうくらい。
ぼくがあいつに勝てるとしたら、唯一、雪道の運転くらい?
岐阜の奥地で育ったぼくは、免許をとってすぐ、雪道との戦いだったから。
ぼくの地元では、就職の決まった人の多くは、高校3年の1月から教習所に通うことが多い。
そして、就職を機に、名古屋に出てくる人も少なくないのだ。
まれに東京とか大阪まで行ってしまうやつもいるが。
当然、ぼくは学校を通じて就職を探したわけではない。
どうしても、名古屋で探偵の勉強をしたくて、探したのだ。
ハローワークの求人で、見つけたときは、信じられない気持ちになった。
そんなところに求人を出すなんて、まさか、というような。
ぼくにとっては、“名古屋で探偵になる運命”のように感じてしまったんだ。
いまでも、たぶん運命だったのかな、と思ってはいるけれど。
実はぼく、最初は名古屋の探偵学校に行こうかと思っていたのだけれど、両親から猛反対。
担任からも、
「なにを考えている?」
と、呆れられる始末。
学校について、ネットで調べたぼくは、その金額にかなり驚いた。
独立して開業サポートまで含めると、年収に近い金額を記載しているところまであったのだ。
それで、探偵の仕事をしながらお金を貯め、いつか学校に行くんだ、という強い気持ちを持ってしまった。
ハローワークでみつけて就職したところでは、2年勤めた。
あいつのもとに来て、3年。
ぼくは学校に行くことはすでにあきらめていた。
というか、学校へ行くことは、それほど重要でない、ということが分かってしまったから。
それより重要なのは、この業界で生きて行くための人脈だ。
あとは、相談の電話をかけてもらうため、他の事務所との差別化を図ること。
それは、明確な価格表示だったり、わかりやすいホームページの作成だったり。
人が安心して、ここなら調査を頼める、と思わせるようななにか。
ぼくの頭の中に、アイデアだけはいっぱいなのだけれど、それを形にするまで、まだ何年もかかりそうだ。
ぼくに一番足りないものは、実現力と、思い切りだったらどうしよう、と迷い始めた今日このごろ。
あいつとの戦いだけで、ぼくの探偵人生を終わりたくない!!!
ここにいる間、なるべくあいつから、ノウハウを盗みとってやろう、と闘士を燃やしつつ、今日も出勤するとするかな。
名古屋の探偵に必要な事は、名古屋での土地勘を身に付けることだろうか。土地勘は教えてもらって身に付くものでもない。自分で実際に歩いて、道を車で走って記憶して身につけていくものなのだ。 名古屋の探偵に依頼があって、この高速に乗ったとしたら、行き先はこことここがあり得るんじゃないかと予想を建てたりもできる。 名古屋の高速道路は意外に難しい。 その先の道を知っていないと、どちら側の車線にいたらいいのかが分からないのだ。 うかつに右車線にいると、左車線に這裏なければならない時にかなり焦る。 ぼんやりと探偵にあこがれていた頃に、名古屋高速を探偵の調査で使うことになろうだなんて、思いもしなかった。 しかも、自分が何処かへ行きたくて乗るわけではなくて、追跡業務の為に乗るので、仕事以外のプライベートで乗る時の緊張感と全く違う。
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